mi転写因子(MITF)遺伝子変異マウスのうち、NK活性を欠くmi/miマウスとNK活性の正常なtg/tgマウスを比較し、NK細胞が持つ2つの主要な細胞障害活性機能分子、グランザイムBとパーフォリンの転写調節におけるMITFの機能を解析し、以下の点を明らかにした。 1)NK細胞におけるグランザイムB遺伝子の発現に対してはMITFは関与しない。 2)NK細胞におけるパーフォリン遺伝子の発現に対して正常型MITFは関与しないが、mi変異型MITFは転写抑制効果を示す。その機序はパーフォリン遺伝子転写活性化に重要な他の転写因子に対する核移行障害作用と考えられた。 3)mi/miマウスは細胞障害活性を有する2系統の細胞種、マスト細胞とNK細胞において異なる遺伝子発現障害を示す変異動物である。即ち、マスト細胞においてはグランザイムBの、NK細胞においてはパーフォリンの遺伝子発現が障害されている。 (考察)tg/tgマウスのNK1.1陽性大リンパ球では、NF-P結合因子がNF-Pモチーフを活性化し、パーフォリン遺伝子の転写が行われる。その翻訳産物、パーフォリン分子はアズール顆粒に貯蔵され、細胞障害活性が正常に備わる。mi/miマウスでもNKL1陽性大リンパ球の数は正常であった。しかし、核移行能が不全なmi型MITFが存在するために、その相互作用パートナーであるNF-Pモチーフ結合因子の一部の核移行が阻害され、パーフォリン遺伝子の転写活性化が低下する。さらに細胞質内アズール顆粒形成も障害されていた。その結果としてmi/miマウスではNK活性が低下していると考えられた。
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