研究概要 |
血圧、脈拍、体温や消化などの生理機能に概日リズムがあることから、薬物動態、すなわち投与薬物の吸収、分布、代謝、排泄が生体リズムの影響を受けることが知られている。癌の治療を考える上で、抗がん剤の時間薬理学的考察はその重要性が指摘されてはいるものの、抗がん剤の開発や他の治療法に比べて研究が進んでいないのが現状である。本研究は、薬物動態の日周リズムを考慮することにより、抗がん剤の効果を増強し、副作用を軽減することを目的とした時間薬物治療をめざして、ヒトを含めた高等動物において、概日リズムを分子のレベルで明らかにしようとするものである。 1、in vivoにおける時計分子の機能を明らかにするために、ショウジョウバエnull変異体を用いたin vivo rescueの実験を行った。ショウジョウバエnull変異体に哺乳類時計遺伝子(Per2,Per3)を導入することにより、行動リズムが回復することを確認し、生体におけるPERの核移行を検討した。 2、ヒトhPer3遺伝子を単離し、その中にVNTR(variable number of tendemrepeat),SVs(Splicing variants),SNPs(single nucleotide polymorphisms)を明らかにした。 3、Differential display法を用いて、視交叉上核(SCN)由来のzinc-finger型転写因子(Lot1)を単離した。Lot1はP1からP10にかけてSCNにおいて強い発現が見られた。これはSCNニューロン間のシナプス形成の時期に一致しており、Lot1のシナプス形成における関与が示唆された。
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