研究課題/領域番号 |
11140258
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
河野 通明 長崎大学, 薬学部, 教授 (00027335)
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研究分担者 |
片岡 貞 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (00082975)
河野 功 長崎大学, 薬学部, 教授 (20038607)
星野 理香 長崎大学, 薬学部, 助手 (60315265)
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キーワード | 細胞がん化 / MAPキナーゼ / MAPキナーゼ・キナーゼ / MEK阻害剤 / アポトーシス / Cdk阻害タンパク質 / 制がん剤 / チオフラボン誘導体 |
研究概要 |
1.ERK-MAPキナーゼ系が恒常的に活性化されている癌細胞株において特徴的に、MEK阻害剤(PD98059)処理でそれを特異的に遮断することで、単相培養、及び軟寒天中でのコロニー形成の何れかにおいても、著しい増殖抑制が認められた。周期動態の解析より、上記癌細胞においてPD98059添加24時間でほぼ完全なG1期停止、48時間以降ではDNA含量の少ないSub-G1細胞の出現を認め、さらに96時間後ではアポトーシスに特徴的な核の分断化、クロマチンの凝縮、さらに核DNAのヌクレオソーム単位への断片化を確認した。PD98059はヒト二倍体繊維芽細胞に対してもある程度の増殖阻害作用を示したが、それは薬物の除去によって速やかに回復し、またアポトーシス様細胞の出現は決して認められなかった。これらの結果は、MAPキナーゼ活性が顕著に上昇している癌細胞に対して、MAPキナーゼ系を特異的遮断する薬剤が実際に「制癌」につながる可能性を示唆するものである。 2.PD98059処理した上記癌細胞のG1期集積の分子機構を、幾つかのG1期調節蛋白質に焦点を当てて解析した。その結果、PD98059処理12〜24時間後よりサイクリンA、サイクリンB1の発現量の減少、RB蛋白質のリン酸化の減少、さらにp27^<Kip1>の発現上昇を認めた。ERK-MAPキナーゼに特異的なフォスファターゼ、MKP-3の過剰発現によってもp27^<Kip1>の発現上昇を認め、これがERK-MAPキナーゼ系の特異的遮断による上記癌細胞の増殖阻害(G1期停止)、さらにアポトーシス誘導の原因となっている可能性が示唆された。 3.PD98059の基本骨格をもとにして2'-アミノチオフラボン誘導体を合成し、それらのMEK阻害活性を測定した結果、PD98059と比較してより強力なMEK阻害活性を示す幾つかの化合物を見出した。
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