研究概要 |
がん化学療法において、がん部位に選択的に薬剤を送達するDDSが期待されており、腫瘍新生血管の透過性亢進によるパッシブターゲティングを利用したリポソーム製剤が米国で使用されている。しかしながらアクティブターゲティングで実用化されたものではない。近年、がん組織への標的化には、腫瘍新生血管を薬物送達の標的として利用するVascular Targetingがより実際的であると考えられるようになった。本研究ではVascular Targetingを目指して、腫瘍新生血管に特異的なペプチドをファージディスプレイランダムペプチドライブラリーより選別し、腫瘍新生血管を標的とするターゲティングへ応用した。15merのランダムペプチドを発現したファージディスプレイライブラリーより腫瘍新生血管に特異的に結合するファージを選別した。血管新生特異的ペプチドのフラグメントペプチドを用いて、新生血管ファージ集積に対する阻害活性を指標に、エピトープシークエンスの解析を行った。その結果。WRP,PRPを候補シークエンスとして選択した。これらのペプチドにパルミトイル基を導入してリポソーム化し、体内動態を測定した。PRPリポソームが腫瘍に高い集積を示した。この集積は腫瘍新生血管に対するターゲティング効果によるものと考えられる。次に腫瘍新生血管標的化リポソームをがん治療に応用した。すなわちPRP修飾リポソームにアドリアマイシン(ADM)を内封し、固形がん担がんマウスに対する抗腫瘍効果を検討した。固形がんはMeth AおよびColon26を用いた。ADM内封腫瘍新生血管標的化リポソーム投与群では、有意に高い腫瘍増殖抑制活性と副作用の軽減が観察された。
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