研究概要 |
本年度は,主に,腫瘍細胞のTGFβの感受性の変化との関連性を探るために,TGFβやBMPによって,誘導され,それぞれの受容体に結合し,本来の気質の接近を阻害しているSmad7とよばれるタンパクを中心に解析した. Smad7を恒常的に活性化しているTGFβあるいはBMPの受容体(TβRI(TD),ALK2(QD))とともにCOS-1細胞に過剰発現させ,H_3^<32>PO_4によるリン酸化ラベルを行ったところ,リガンド刺激依存的なリン酸化が確認された.さらに,リン酸化アミノ酸の解析を薄層電気泳動で,リン酸化部位の同定をTOF-MSを用いて行った結果,TGFβ,BMP依存的なSmad7のリン酸化は,主にMH2領域に存在するSer残基であることが明らかとなった.また,そのSerをAlaにかえるとSmad7のTGFβシグナルの抑制作用が減弱し,このリン酸化は,Smad7の活性に重要であることが示唆された. また,ヒトSmad7のプロモーター領域をヒトgenomic libraryよりクローニングし,pGL3-basicに組込み、レポーター遺伝子を作成後,解析を行った.TGFβ及びBMP、いずれによる転写活性化も観察され,さらに種々の欠失変異を作成し,TGFβ及びBMP応答領域をほぼ同定した. Smad7の安定性についても検討した結果,リガンドの刺激に依存せず,おそらくユビキチン化によりプロテアソームにより分解されることを明らかにした. 一方、TGFβを介した免疫抑制の作用機序も進めているが,IFN-γシグナルへのTGFβ,あるいはその下流のsmadタンパクの影響をGAS依存的,あるいはIRF-1依存的なレポーター遺伝子を用いて,種々の細胞で検討したところ,全く影響が見られず,また,Smad2や-3,-4とIRF1,Statlなどとの結合も見られなかった.
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