研究概要 |
SKY(spectral karyotyping)法とCGH(comparative genomic hybridization)を用いて造血器腫瘍やがんで認められるゲノム異常の解析を行った.前者では,骨髄異形成症候群(MDS)と悪性リンパ腫(ML),後者では胃がんを対象にした.G-band像とSKY解析像を同時並列する方法(dual karyotyping)を開発し,MDS, ML各20症例の解析を行った.この結果,G-band法では同定が困難だったマーカー染色体(mar),付加染色体(add)のほとんどをほぼ完全に,MDSに特徴的とされる5q-異常の約半数が,単純な欠失ではなく種々の染色体と不均衡型転座をおこしていることなど新知見をえた.さらに,切断点より単離されている遺伝子をプローブとするFISH法を併用することで,複雑であってもMDS, MLの多数症例でほぼ完壁な核型作成に成功した.また,HSRの解析を行い,MDSの1症例においてこれまで報告のないAML1の増幅を観察した.MLLでは研究がまだ続行中であるがB-細胞腫瘍で,これまで報告のないt(6;14)(q13; q32), t(13;14)(q14; q32)を同定するとともに,複雑転座のなかにかくれた14q^+を検出した.さらにわれわれは,G-band像を必要としない新世代SKY法の開発を併せて行ってきた.それは,バンド特異的DNAをDOP-PCRで増幅し,蛍光標識してプローブとするSKY法で,multicolor-banding法と名づけた.一方で,CGH法を一般化し,胃がん臨床検体72例を解析した結果,8p23.1をはじめ標的候補遺伝子が明らかでない高頻度増幅変化を示す染色体領域数個を同定した.その一つの20q13にはセントロソームの倍加に関与するBTAK,アポトーシス誘導に関連するDCR3,シグナル伝達に関与するAIBIのmapされているのが知られた.また,胃がんの共通欠失領域の一つとして同定した1p36にはAML2がmapされた,現在LOH解析や発現異常を検討中である.
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