がん治療において行われる放射線照射、化学療法は、ともに骨髄由来の顆粒球などを減少させる。故に患者は顆粒球減少症に伴う感染の危険にさらされる。これを防ぐためには骨髄移植が一つの方法であるが、移植骨髄の拒絶が問題である。この拒絶には通常のT細胞が関与するのではなくNK細胞が関与すると考えられてきたが、最近の研究からはNK細胞とT細胞の両方の特質を持ったNKT細胞群の関与も示唆されている。本年度の研究では、マウスのハイブリッド抵抗性をモデルとして、移植骨髄片の拒絶に機能するエフェクター細胞を同定した。Rag-2 ノックアウトマウス(以下[KO]rag-2)ではB細胞、T細胞並びにNKT細胞は分化しないが、NK細胞は正常に分化する。まず、3系統の[KO]rag-2、すなわちC57BL/6-[KO]rag-2、C3H/HeN-[KO]rag-2、 及びBALB/c-[KO]rag-2を用いてハイブリッド抵抗性を検討した。(C57BL/6×C3H/HeN)F1-[KO]rag-2や(C57BL/6×BALB/c)F1-[KO]rag-2にC57BL/6由来の骨髄を移植したところ、移植骨髄は拒絶された。さらに、NK細胞の分化も抑制されているC57BL/6-[KO]γc[KO]rag-2を用いて、(C57BL/6×BALB/c)F1-[KO]γc[KO]rag-2を作製し、このマウスにC57BL/6由来の骨髄を移植したところ、拒絶反応は見られなかった。これらの事実から、移植骨髄片の拒絶にかかわるエフェクター細胞はNK細胞であり、NKT細胞は必須でないと結論した。
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