研究概要 |
昨年と同様に以下の4つの方向から研究を進めてきた。(a)分裂酵母のRfc3:免沈・ウエスタンブロット解析により調べたところ、Rfc3とRad17がin vivoで結合していることを証明した。野生株ではDNA傷害チェックポイントを制御する下流の蛋白質キナーゼであるChk1は紫外線、ガンマ線、MMS処理によりリン酸化されてポリアクリルアミド電気泳動による泳動度度が上側に移動するが、rfc3-1変異株ではこの移動が観察されない、すなわちChk1はリン酸化を受けないことを見い出した。(b)哺乳動物細胞E2FのS期開始制御機構:ヒトMCM5,MCM6遺伝子の5'上流をクローニングして幾つかのE2Fモチーフを見いだしたので、これら遺伝子がG1/S期で劇的に転写誘導される仕組みを解析した。この結果、MCM遺伝子の転写誘導は主としてE2F1により決定されていることを証明した。(c)哺乳動物のMCM/P1蛋白質:ヒトのMcm4,-6,-7がヘキサマーを構成してリング構造を持つことをネガティブ染色により観察した。またMcm2,-4,-6,-7ではサイズの小さいより明瞭なリング構造を持つことをロータリー・シャドウイング法により示した。(d)出芽酵母のNik1のS期開始制御:FLAG tagを付けたClb5サイクリンを作製し、このFLAG-Clb5に依存するカイネース活性をヒストンH1を基質に用いて測定した。この時、Swe1を高発現させた酵母抽出液でFLAG-Clb5免疫沈降物を前処理すると、H1のリン酸化が大幅に抑えられることがわかった。この結果は、Nik1がS期CDKの活性調節を通して、DNA複製の調節機構に参加している可能性を示している。
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