細胞増殖因子が細胞表面の受容体に作用すると、両者は複合体として細胞内に内在化・分解され、down-regulationされる。このプロセスは増殖シグナルの負の制御機構として重要な役割を担っている。我々はこのプロセスに新規シグナル伝達分子Hrs-Hbp複合体が関与すること、その働きにはHbpのSH3ドメインに結合する蛋白質が必須であることを既に示している。昨年度は、このような蛋白質の候補としてユビキチン特異的プロテアーゼUBP-Yを同定した。本年度はHbpとUBP-Yの相互作用について詳細に検討するとともに、新たなHbp結合蛋白質のスクリーニングをおこなった。 UBP-Y上のHbp-SH3結合部位を検討したところ、最終的には2箇所、各々9アミノ酸の領域にマッピングすることができた。SH3は通常、プロリンに富む配列に結合し、そのコンセンサス配列も知られているが、今回明らかにされた結合部位は、このコンセンサス配列に合致しない新しいタイプのものであることがわかった。 いっぽう、あらたなHbp結合蛋白質としてファーウェスタン法によりポリユビキチンを同定した。実際、Hbpはユビキチンセファロースヘの結合能をもっており、相互作用を確認できた。また、Hbp上のユビキチン結合部位をマッピングしたところ、HbpのN-末端側の領域がユビキチン結合能をもつことを見い出した。この領域は既知のユビキチン結合蛋白質と相同性が見られない新規のものであった。 現在、酵素活性やHbp結合能を欠失したUBP-Yの変異体、あるいはユビキチン結合領域を欠失したHbp変異体を過剰発現することにより、増殖因子と受容体の細胞内分解がどのように影響されるかを解析中である。
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