研究概要 |
プロリンは他のアミノ酸と異なり、イミノ酸として特殊な構造をとることから多くのプロテアーゼやペプチダーゼはプロリン周辺に作用できないことが知られている。そのため、種々のプロリン特異性ペプチダーゼが存在し、多くのプロリンを持つ生理活性ペプチドやプロテオリシスに関係し代謝調節に重要な働きをしていると考えられている。本研究ではプロリン特異性酵素の中、プロリルアミノペプチダーゼの立体構造を明らかにし、更にその構造からプロリンへの選択的基質特異性の発現機構を部位特異的変異法を用いて明らかにした。酵素の活性部位は活性ドメインとヘリックスドメインの間に触媒残基(Ser,His,Asp)が存在し、その近くに疎水ポケットが存在する。この疎水ポケットの中央付近にPhe139とTyr149があることから、これらのアミノ酸をアラニンに部位特異的変異法で変えた。Phe139Alaのみ活性が低下したことからPhe139がプロリンとスタックすることで5員環を認識していることが分かった。次いで、Glu204をGlnに変えた結果、活性に大きく影響したピロリジンのアミノ基の認識に関与することが明らかになった。最後に、Arg136が基質のP1'カルボニル酸素と近い位置にあることから、このArg136をAlaに変えると、ペプチダーゼ作用はほぼ完全に消失した。しかし、アミダーゼ作用がほぼ天然の酵素と同程度残っており、ペプチドのP1'の認識に関与することを明らかにした。以上の結果から、プロリンの認識機構を初めて明らかにすることができた。
|