研究概要 |
今年度は、基底核を表す部分ネットについて、前年度のものよりも詳細な解剖学的構造を考慮に入れて精緻化を図り、基底核のindirect pathwayをモデルに組み込んだ。すなわち、indirect pathwayの回路としては、解剖学的に確認されている(1)線条体熬W蒼球外節燻居-下核熬W蒼球内節と(2)線条体熬W蒼球外節熬W蒼球内節を採用した。さらに、淡蒼球内節においては、indirect pathwayはdirect pathwayに比べて神経投射の選択性は弱いと仮定した。 本モデルによって、ドーパミンの代謝異常による運動障害のシミュレーションが可能になり、病理学的所見を再現することができたと考えている。 例えば、Hyperkinesiaにおいては、我々のモデルによると、線条体でのドーパミン過剰はdirect pathwayの活動亢進によって淡蒼球内節のmovement-related neuronsのトニックな活動を強く抑制する一方で、線条体からindirect pathwayへの出力はドーパミンによって抑圧されるので結果的には淡蒼球外節の出力は脱抑制によって亢進し、(1),(2)の経路を経て淡蒼球内節の活動を強く抑制する。これによって視床ニューロンの脱抑制を介して大脳皮質にポジティブフィードバックが掛かり、ある種の運動要素をコードしたニューロン活動がビルドアップされる。しかしながらindirect pathwayの方がdirect pathwayよりも神経結合の特異性が弱いと仮定しているために、ある運動要素をコードしているmovement-related neuronsの活動が変化している時に別の運動要素をコードしているmovement-related neuronsの活動が変化してしまい、ひとつの運動に留まることができなくなると解釈できる。これによってハンチントン舞踏病に見られるような不随運動が説明できるものと考える。
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