熱帯熱マラリア治療後に顕微鏡法で原虫が検出されなくなった段階で、他の検出法を用いて、完全治癒したのかあるいは再燃するのかを予知できるかどうかの検討を行った。検出法としては顕微鏡法以外に我々のPCR法、抗原検出法としてhistidine-rich protein IIを検出するParaSight FおよびICT Malaria P.f、さらに原虫由来LDHを検出するOptiMALなどを用いた。ICT Malaria P.fとOptiMALについては導入が遅れたことから、症例数は少なかった。 PCRを併用しての測定では、完全治癒の場合、顕微鏡法が陰性化してからPCRの陰性化までは4日以内であった。そこで、それ以上すなわち5日以上のPCR陽性が続く場合には再燃を意味する可能性を考えていたが、顕微鏡法陰性化後7日間PCR陽性が続き、結局再燃した症例を経験し、この基準が適切であると思われた。ParaSight Fを併用しての検討では、完全治癒例でも2〜4週間も陽性が持続することが判明し、従来の判定方法を使う限り、治癒の判定、再燃の予知には不適切であると考えられた。OptiMALでの検討は少数例であるが、完全治癒の例でParaSight FやICT Malaria P.fよりも早く陰性化していることから、治癒の判定、再燃の予知に役立つ可能性が示唆された。 この種の研究には、国内発症のマラリア症例が多くないこと、治療により解熱してからの患者の詳細な追跡が難しいことなどの困難な点があるが、さらに症例を重ねて検討を続けることが必要である。
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