Febrifugineは、古くから抗マラリア候補化合物として知られていたものの、提唱された構造が二度にわたって誤っていたこと、および天然からの入手はその収率が極端に低いこと等の理由から、信頼おける構造と抗マラリアとの相関研究は遅れていた。さらに、近年、Febrifugine誘導体に優れた抗マラリア作用を持つものが発見されたことを機に、Febrifugineおよびその誘導体の簡便かつ大量合成可能な合成法が必要となった。そこで、有機化学的な手法を駆使し、Febrifugine誘導体にも適応可能なFebrifugineの合成法の研究開発を本年度の目的とした。 安価に入手可能な3-hydroxypyridineを出発原料として、9行程、総合収率約5%でd1-Febrifugineを合成できる方法を開発できた。本法は、過去に報告されているいずれの方法よりも総合収率の点で優れており、誘導体合成に不可欠な、簡便かつ大量合成可能なものとして高い評価を得た。さらに、この中で、見い出すことができた異常クライゼン反応や高立体選択的還元反応は、有機化学の分野でも、他の化合物の合成に取り入れることができる有用なものであった。ここで得られたFebrifugineの抗マラリア作用について試験したところ、天然のものとその活性は同等と評価できた。すなわち、今後の新規抗マラリア薬に向けてのFebrifugine誘導体における構造活性相関研究は、ラセミ体で充分であるという有益な示唆を与えたものと考える。
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