研究概要 |
本年度は、脳マラリアの重症度の違う3種のサル、ニホンザル、アカゲザル、カニクイザルにPlasmodium coatneyiを感染させたマラリア原虫感染赤血球を用いて、動的状態におけるマラリア原虫感染赤血球の血管内皮細胞への接着の解析を行った。 我々の樹立した血流モデルを用いて、毛細管内面をICAM-1,CD31,E,P-selectimの各トランスフェクタント、C32細胞で被覆し、3種のサルより得られたP.coatneyi原虫感染赤血球の接着の動態、またその際の接着分子の役割を解析した。特に流速を変化させ、それに応じて接着の状態がどのように変化するか、またどのような接着分子が関与するかを検討した。3種のサルともP.coatneyi原虫感染赤血球は、C32細胞、ICAM-1トランスフェクタントは1.0〜1.5dyne/cm^2の低流速において接着することが観察された。ICAM-1以外のトランスフェクタントでは低速な条件下で接着現象は起こらないが、ローリング現象は観察された。また、C32細胞を抗CD36抗体、抗ICAM-1抗体での阻止実験では抗CD36抗体による処理によって接着が阻害されたことから、P.coatneyi原虫感染赤血球とC32細胞の接着は熱帯熱マラリア原虫感染赤血球の接着と同様にCD36によるものと考えられる。 熱帯熱マラリア原虫感染赤血球によって、宿主血管が閉塞されるに至る過程において、マラリア原虫感染赤血球の宿主接着分子への接着が重要な役割を果たしていると考えられ、ICAM-1やCD36はその初期接着であるローリング現象を担っている。さらに、その初期接着に続く強固な接着は原虫感染モデルを用いた結果からもCD36であることが示唆される。よってCD36によるP.coatneyi原虫感染赤血球の接着が最終的に血管の閉塞に至る過程において最も重要な役割を果たすと考えられる。
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