これまでに沖縄産Acanthella属海綿から新規化合物を含むカリヒナン型ジテルペノイドを単離し、それらの抗マラリア活性を検討したところ、kalihinol Aはマラリア原虫に対する抗マラリア活性を示し、マウス乳ガン細胞FM3Aとの選択毒性比が317であることを見い出した。そこで本年度は、沖縄産の海洋生物から抗マラリア作用物質のさらなる探索とkalihinol Aの合成法の開発の2点を目的に研究を行った。 沖縄県石垣島近海にて採集した数種の海綿から、新規化合物を含む数種の化合物を単離した。これら化合物及びこれらの化学修飾体の抗マラリア活性を検討したところ、いくつかの化合物はマラリア原虫に対し、弱い抗マラリア作用を示した。 カリヒナン型ジテルペノイドの絶対配置は、これまで決定されていない。そこで、kalihinol Aの合成に先立ち、その絶対配置を明らかにすることにした。kalihinol Aの2つのイソシアノ基を加水分解することによりジアミンとし、それをビス-ρ-ブロモベンズアミドに変換後、その化合物にCD励起子キラリティー法を適用することにより、kalihinol Aの絶対配置を決定した。 光学活性なスルホンのアニオンとゲラニオールよりSharpless酸化等により合成した光学活性なエポキシドとの位置選択的なカップリング反応を用い、分子内Diels-Alder反応の前駆体となるテトラエンを合成した。次いでこの化合物をトルエン中加熱することにより分子内Diels-Alder反応を行い、望ましい立体配置を有するtrans-デカリン誘導体を合成した。さらに、テトラヒドロピラン環の構築を行い、kalihinol Aの全環構造を有する化合物の合成に成功した。現在、本化合物よりkalihinol Aの合成を検討中である。
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