1.組換え体マラリア原虫エノラーゼとの抗体の反応性 DNAデータベースの配列を基に特異的プライマーを作製し、目的遺伝子を増幅し、組換え融合蛋白質発現ベクターに組み込み、これを導入した大腸菌を大量培養し、発現した組換え体エノラーゼを精製した。SDS-PAGEで泳動した組換え体の48.7kDの抗原タンパクと重症熱帯熱マラリア患者血清とが強く反応することを確かめた。さらには臨床的重症度に従ったタイ患者の血清との反応性を調べたところ、免疫力を獲得しているであろうと考えられる患者血清との反応性が比較的強かった。 2.抗エノラーゼ抗体の作製 上記組換え体エノラーゼ融合蛋白質を抗原として、Balb/cマウスにアジュヴァントともに感作させた。追加感作を2回行った後、マウスの血清を分離して上記融合タンパクを抗原としたSDS-PAGE、虫体を抗原としたIFATにより特異的抗体の上昇を確認した。 3.in vitroでの熱帯熱マラリア原虫増殖阻害試験 上記マウスの血清をin vitroでの熱帯熱マラリア原虫培養上清に段階的に濃度を調整して混入し、マウスが産生した抗体が特異的に原虫の増殖を阻害することができるかどうかを解析した結果、最高で70%の増殖阻害を認めることができた。 4.エノラーゼ蛋白の発現ステージと蛋白の局在 上記マウスの血清を用いて、レーザー走査顕微鏡で蛋白の局在を解析したところ、主に原虫の細胞質内に強く、さらにはメロゾイト周辺にも局在していることが確認された。 5.原虫の増殖による糖の消費量 in vitroの系において、原虫の増殖により培養上清中の糖の消費がどのくらい行われるかを、経時的に採取した培養上清をワコーグルコースCII-テストキットを用いて調べた。さらには上記で得られた抗体による原虫の増殖阻害が糖の消費量にどの程度影響を及ぼすかを考察した。
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