TNFRファミリーのレセプターのシグナル伝達分子であるTRAFファミリー蛋白質の機能が注目され、その下流のIKK-NF-κBやMEK-MAPKへのシグナル伝達の分子機構も解明されつつある。我々は、yeast-two hybrid法を用いてTRAF5に結合しTRAF蛋白質によるNF-κB活性化を抑制する遺伝子として、STAT1の特異的抑制蛋白質として報告されたPIAS1を単離した。本研究ではTRAFシグナルの抑制分子としてのPIAS1の構造と機能を明らかにすると共に、TRAFシグナル伝達系とJAK-STATシグナル伝達系のクロストークを解析し、TNFRファミリーレセプターのシグナル伝達におけるPIAS1の生物学的機能を検討した。本研究を通じて以下の事柄を明らかにした。 1、STAT1の特異的inhibitorとして報告されたPIAS1は、そのacidic region(429-474aa)を介してTRAF5と結合する。 2、PIAS1はTRAF5によるNF-κB活性化経路を抑制する。 3、PIAS1はTRAF5によるp38MAPKの活性化を抑制する。 4、TRAF5のシグナルはp38MAPKの活性化を介してIFN-γ-JAK1-STAT1のシグナル伝達系を活性化する。 従って、TRAF5はJAK1によるSTAT1のTyr701リン酸化に加えて、Ser727のリン酸化によりその活性を増強することが示唆された。 TRAF5によるNF-κB活性化経路の作用点は、NIKあるいはMEKK1との結合阻害と推定されるが、この点は今後の解析が必要である。
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