研究概要 |
我々はマウスの胚中心(GC)B細胞においてrecombination activating geneの産物(RAG-1,RAG-2)が発現しV(D)J再構成が行われることを明らかにしてきた。しかし、再発現したRAGがどのような生理的役割を担っているかはほとんど解明されていない。胚中心ではBCR遺伝子の体細胞変異による多様化と正および負の選択により抗体の親和性成熟が行われる。我々は抗体の親和性成熟の過程にRAGが直接的に寄与しているかどうか検討した。抗NPmAb(17.2.25)のV_HDJ_H(V_HT)を一方のalleleのJ_H部位に組み込んだ(V_HT x C57BL/6)F1マウス(以下F1と略称)を用いた(表現型V_HT/J_Hκ^+κ-λ^+/λ^+)。F1マウスを、そのBCRに対して低親和性の抗原であるp-nitrophenyl(pNP)-CGGで免疫し、pNPに対する親和性成熟過程を解析した。F1マウスのB細胞の少なくとも80%がV_HTとをκ鎖を発現していた。pNPでF1を免疫すると、クラススイッチを伴う抗pNP応答が誘導され、免疫後8日から16日にかけて親和性成熟が進行することが確認された。血清およびハイブリドーマの解析から、高親和性抗pNP抗体の多くがλ鎖を持つこと、親和性成熟に伴いλ陽性抗体の割合が増加することがわかった。In vivoでのRAGの発現を抑制するために免疫後3回、抗IL-7R α抗体を投与したところ、抗体生産量が低下することなく、(1)リンパ節細胞でのRAGの発現抑制、(2)λ鎖の再構成による環状DNA切り出し産物の減少、(3)λ陽性抗体の割合の減少、(4)親和性成熟の抑制が起こることが確認された。これらの結果は胚中心でのλ鎖遺伝子のRAGによる再構成が親和性成熟に寄与することを示す。
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