研究概要 |
1.コムギの場合に見出されたのと同じ分子量のRubisco大サブユニットの37kDaフラグメントが、ホウレンソウ、オオムギ、エンドウから単離した葉緑体を同様に処理した場合にも見出された。また、オオムギ及びイネから精製したRubiscoをヒドロキシルラジカル発生系(Fe^<2+>-H_2O_2-ascoribic acid)に曝した場合にも、37kDaフラグメントおよび16kDaフラグメントの出現が認められた。これらの結果は、ヒドロキシラジカルによるRubisco大サブユニットの部位特異的な切断化は,高等植物のRubiscoに共通に見られる現象であることを示唆していた。そこで既報のデーターに基づき切断部位近傍のアミノ酸配列について比較した。Gly-329はいずれの植物種においても保存されていたが、その両端のアミノ酸については、ホウレンソウとオオムギがコムギと同様にSとTで、エンドウはAとT、イネはAとAであった。現在、オオムギ、エンドウ、イネのそれぞれのフラグメントの末端アミノ酸についての同定を行っている。 2.葉緑体ストローマ酵素のGS2も光照射下の葉緑体およびその破砕液中で部位特異的に断片化されることが明白となった。すなわち、単離葉緑体及びその破砕液を光照射下におくと、GS2はRubisco同様、部位特異的に断片化された。そしてこの断片化は、、金属キレーターのEDTA,1,10-phenanthrolineにより完全に阻害され、セリンプロテアーゼ、アスパルティックプロテアーゼ、システインプロテアーゼに対する阻害剤によっては阻害されなかった。また活性酸素のスキャベンジャーでは、カタラーゼ、n-propyl gallateが顕著な阻害効果を示した。さらにこの断片化は、GSの阻害剤で酵素に強固に結合するmethionine sulfoximine(MSX)により完全に阻害された。これらの結果は、我々がRubiscoで見出した結果と全く同様であり、GS2が相同の機構により断片化されていることを強く示唆している。
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