研究概要 |
1.S欠乏によってそのmRNAレベルが誘導される2種類のシロイヌナズナ硫酸イオントランスポーターAST68とAST101はそれぞれ低親和型、高親和型であることを酵母で発現した組み換え体によって証明した。 2.新たに得られた硫酸イオントランスポーター遺伝子AST101は根に特異的に発現し、硫酸欠乏によってAST68よりも早い時期に一過的に誘導される。トランスジェニック植物におけるAST101プロモーター-GFPの発現は表皮及び皮層に見られた。従って、根における表皮から維管束への硫酸イオン取り込みは、異なった時間的、空間的な発現プログラムを持ったAST101とAST68の役割分担によってなされていることが示された。また、これらのレベルはo-アセチルセリンの添加によって誘導されることが示された。 3.その他5種類の硫酸イオントランスポーターホモローグのうちAST82は葉緑体に移行することが示された。 4.セリンアセチル転移酵素のなかで、細胞質に局在するアイソザイムはシステインによるフィードバック阻害をうけ、その阻害感受性はカルシウムイオンによって微調整されていることが示唆された。 5.シロイヌナズナをS欠乏にすると細胞内のカルシウムイオンが一過的に上昇することがエクオリンを導入したトランスジェニック植物で示唆された。従って、S欠乏によって引き起こされる連続的な事象として、S欠乏→カルシウムイオン上昇→セリンアセチル転移酵素活性の脱抑制→o-アセチルセリン上昇→硫酸イオントランスポーター遺伝子AST101,AST68の発現誘導→硫酸イオン吸収増加、という仮説を提示する事ができる。
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