RSGは塩基性領域ロイシンジッパー(bZIP)構造を持つ新しい転写因子で、高等植物の光合成の場を形成するシュートの成長を制御する。植物体における転写因子RSGの機能を探るため野生型RSGの機能を阻害するドミナントネガティブ型RSGをタバコ個体で発現させた。RSGの機能が抑制された形質転換タバコでは茎の節間成長が著しく阻害され対照植物に比べて背丈が1/7程度となった。さらにこの形質転換タバコでは細胞伸長の方向を制御すると考えられている表層微小管の構造破壊が観察された。本研究ではbZIP型転写因子RSGを中心とした転写制御系がどのようにして光合成の場を形成するシュートの成長を制御するのかを明らかにすることを目的とした。 ドミナントネガティブ型RSGを発現する形質転換タバコの形態変化にはジベレリン(GA)が関与していると考えられたので、GA合成系の中間体を定量しGA合成系のどのステップが阻害されているか調べた。その結果、形質転換タバコでは少なくともGA_<53>より上流の合成系に異常がある事が示唆された。正の転写因子であるRSGは、ジベレリン合成酵素または代謝に関係するタンパク質遺伝子の発現を直接あるいは間接的に制御していると考えられる。シュートの成長に関する転写制御系のネットワークを明らかにするため、RSGと相互作用するタンパク質14-3-3について解析した。14-3-3タンパク質は多くの場合、標的タンパク質のリン酸化されたセリンと結合して、その機能を調節する。RSGの114番目のセリン残基が14-3-3との結合に必須であることが明らかになった。このセリンのリン酸化によりRSGと14-3-3との結合が制御されていると予想された。トランジェントアッセイの結果、14-3-3と結合できない変異型RSG^<S114A>はRSGよりも強い転写活性化能を持つ事が示された。14-3-3は転写活性化因子RSGの機能を負に制御していると考えられた。
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