光合成により固定された炭水化物は、植物のシンク器官(特に貯蔵器官)へ送られ貯蔵物質として蓄積される。イネSPKは、登熟中期の未熟種子特異的に強く発現するカルシウム依存プロティンキナーゼである。今年度の研究で以下の結果が得られた。 1.SPKはショ糖合成酵素をリン酸化する活性を有した。また、自己リン酸化活性が認められた。 2.未熟種子粗抽出物の中に、少なくとも3種のタンパク質がSPKによりリン酸化されることが明らかとなった。免疫沈殿実験により、そのうちの2つはSPK自身とショ糖合成酵素であると考えられた。SPKはこれらを効率よくリン酸化することが明らかとなった。 3.ショ糖合成酵素はN末端領域のセリンがリン酸化されて活性化されるとの報告がある。部位特異的置換により、このセリンを置換した変異型ショ糖合成酵素を作成した。SPKによるリン酸化反応は、変異型ショ糖合成酵素では認められなかったため、SPKはショ糖合成酵素をリン酸化し活性化する制御因子の一つであることが明らかとなった。 4.レポーターアッセイやin situハイブリダイゼーションの結果、SPK遺伝子は、胚乳特異的な遺伝子発現が明らかとなった。アンチセンスSPKイネでは未熟種子のデンプン生合成が阻害されてショ糖が蓄積するが、SPKはデンプン生合成経路の初期反応であるショ糖合成酵素の活性化因子であり、アンチセンス植物では、この酵素の活性化が阻害されるためショ糖の段階でとどまったのであろうと考えられた。
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