アフリカツメガエルのオーガナイザーに発現するLIMホメオドメイン蛋白質Xlim-1は転写因子として働きオーガナイザーの前方型神経組織の誘導に関与していることが示唆されている。したがってXlim-1の標的遺伝子を明らかにすることはオーガナイザー活性を担う分子カスケードの一端を明らかにする上で非常に重要である。本研究では、Xlim-1の標的遺伝子候補の検索と、またその過程で見い出されたcerberus遺伝子のプロモーター解析を行った。(1)サブトラクション・ライブラリーを用いたXlim-1標的遺伝子候補の検索:活性型Xlim-1を発現させたアニマル・キャップを用いてサブトラクション・ライブラリーを作成し検索したところ10種の遺伝子を得た。全胚in situハイブリダイゼーションで発現領域を検討した結果、5つ遺伝子がオーガナイザー領域に発現し、その中に頭部誘導因子Cerberusの遺伝子が含まれていた。(2)cerberus遺伝子のプロモーター解析:cerberusのゲノム遺伝子プロモーター領域を単離しpGL3-basicベクターに組み込み、ルシフェラーゼ遺伝子をレポーターとしたレポーター・コンストラクトcer/Lucを作成した。cer/Lucと活性型Xlim-1 mRNAをアフリカツメガエル2細胞期の動物極側に顕微注入し、胞胚期でアニマル・キャップを切除し、原腸胚期でルシフェラーゼ活性を測定した。その結果、(i)活性型Xlim-1により強く活性化されること、(ii)反応領域は0.58kbで十分であること、(iii)その領域にXlim-1の結合配列である多数のTAATコアモチーフが存在すること、(iv)-0.22から-0.12を欠失すると反応性が消失すること、が明かとなった。これらの結果はcerberusがXlim-1の直接の標的遺伝子であること、およびXlim-1のオーガナイザー機能への関与の少なくとも一部はcerberusの発現を介していることを示唆している。
|