研究概要 |
TGFβファミリーに属するlefty2の胚発生における役割を明らかにするため、lefty2ヌル変異マウスの作成及び解析を行った。lefty2は嚢胚形成に胚体後方中胚葉で発現するが、lefty2-/-胚にはこの発現が消失することによる異常が生じた。lefty2-/-胚には7.75dpc以降になっても中胚葉分化が観察されず、代わりに原条領域は側方に拡張し、大量の中胚葉が蓄積されていった。TGFβファミリーに属するnodalは嚢胚形成後期まで胚体外胚葉と内胚葉で発現するが、lefty2-/-胚ではnodal発現は消失することなく持続した。さらに、lefty2-/-nodal lacZ/+胚ではlefty2-/-胚の表現型が部分的にレスキューされた。従って、Lefty2はnodal発現を抑制することによって原条の維持に働いていることになる。 laftyとnodalの相互関係をゼブラフイッシュでさらに解析した。マウスlefty2及びantivin(ゼブラフイッシュlefty1)過剰発現胚の表現型はNodalシグナリング欠損変異体の表現型と極めて一致した。Nodalシグナリングを欠くMZoep変異体やantivin過剰発現胚ではsquint,cyclops(ゼブラフィッシュnodal)及びantivinの発現が維持されず、逆にsquintの過剰発現によってantivinが発現誘導された。また、ActRllBとativin及びsquintの共注入はそれぞれの過剰発現の効果を抑制することから、ActRIIBは両因子の共通の標的であると考えられた。 以上より、Nodalは自分自身の発現を誘導させる一方でleftyの発現も誘導する。leftyは恐らくNodalとActRIIBを競合することでNodalシグナリングを抑制するフィードバック阻害因子であることを明らかにした。
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