研究概要 |
I.プラナリアの強い再生能力は新生糸細胞と呼ばれる幹細胞によるとされている。しかし、新生細胞が1種類の全能性細胞であるのか、多様な多能性手細胞の集合であるのかは決定されていない。本研究によって、プラナリアに全能性の幹細胞の存在することを強く支持する体細胞変異個体をえたので報告する。プラテリアは自切そして再生によって個体数を増やす無性生殖を行なう。1個体が3週間に1回ほどのペースで倍加し、1年10^5個体を作り出す。この数字は個体の構成細胞数である10^6にせまるものである。優性な突然変異細胞がプラナリアの体内に出現すれば、容易に体中に広がることが予想される。プラナリアSSPクローン系統から、2種類のサブクローンSSP9とSSP-MEが分離された。SSP9は咽頭領域に異常が発現し、咽頭の多形成、早熟な外生殖器形成の組織像を示す。SSP-MEは眼を過剰に形成する表現型を示す。両サブクローンは切断、自切によって個体数を増やすことが可能であり、外見上正常にみえる切断片は再生進む。このようなサブクローンの存在は体細胞突然変異を起こした1個の全能性細胞が増殖し、子孫細胞が体中に散らばり、1個体を形成したことを強く支持するものである。 II.プラナリアの新生細胞と生殖系列の細胞はいずれも生殖顆粒に似たクロマトイド小体をもつ。我々は生殖顆粒形成に関わるvasa,nanosのプラナリア相同遺伝子DjvlgA、Djnosをクローニングし、これらの発現様式によって新生細胞と生殖系列の細胞が識別できることを示した。今回、Djnosが確かにクロマトイド小体の構成要素であることをin situ-electron microscopyによって明らかにした。さらにクロマトイド小体を単離、精製する目的で、DjvlgAタンパク質の抗体を作成したsomatic stem cel l, germlinc stem cellの全能性の分子的基盤を理解するために、クロマトイド小体分子複合体の解析を進めていく。
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