研究概要 |
嚢胞性線維症(cystic fibrosis:CF)は,白色人種の間で最も頻度の高い常染色体劣性遺伝性疾患である.CF患者の約70%は,508番目のフェニルアラニンの欠損変異(ΔF508CFTR)である.この変異蛋白質はフォールディングが不完全であるために,小胞体の分子シャペロンであるcalnexin(CNX)から解離できず,小胞体に保持される.その結果,CFTRは形質膜上に発現することができない.そこで,本研究では我々が最近見い出したcalnexin isoform(iCNX)を用いた新しい遺伝子治療法について検討した.この治療法の原理は,iCNXによりCNXからΔF508CFTRの解離を促し,チャネル機能は正常なΔF508CFTRを形質膜上に発現させるというものである.まず,導入したiCNXの局在を調べるために,GFP-iCNX融合蛋白質および免疫蛍光染色法を用いて検討したところ,iCNXは小胞体内に局在することがわかった.次に,iCNXを高発現する組換えアデノウイルスを用いてCFTRのmaturationについて,Westernblotting法およびpulse-chase法を行い検討した結果,iCNXはCFTRの発現量を増加させ,さらにΔF508CFTRの小胞体保持からの解離を促すことがわかった.さらに,ΔF508CFTRが形質膜上に移行し,機能しているか否かについて125 I efflux法を用いて検討したところ,iCNX導入細胞においてCFTRが機能していることが確認された.
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