本研究補助金を利用することによって、すでに我々が筋肉に特異性が高い新規の低分子量熱ショックタンパク質(sHSP)として同定・命名していたMKBPの構造機能相関に関する研究を大きく進展させることができた。この結果、今後MKBPの生理的機能をさらに検討していく上で有用となる、変異体を設計するための基礎データを得ることができた。哺乳動物の筋肉中に多量に発現しているsHSPは5種存在し、それらが非常に選択的な相互作用を示すことによって2つの独立した会合体を形成していることを、我々はすでに明らかとしている。その中で、MKBPはホモ会合活性を示すとともに、HSBP3とも結合する。まず、こうしたMKBPの選択的会合特性に関与する分子上の領域を酵母two-hybrid systemを利用して検討した。そして、1)当初の予想に反して、選択的なホモ会合、およびHSPB3との結合両方に、MKBPを特異的な配列が存在するN、またはC末端は必要ではなく、むしろsHSP全般に保存されたα-crystallinドメインが関与していること、2)しかし、その2種の結合に必須な領域は微妙に異なり、ホモ会合にはその前半部分、HSPB3との結合にはこのドメイン全体が必須であること、3)MKBPの生理的気質と考えられる、筋強直性ジストロフィーキナーゼ(DMPK)との結合もやはりこのα-crystallinドメインのより広い領域が関与していること、などが示された。一方、今回初めてMKBP、およびHSPB3に関して他の既知のsHSP(HSP27)と同様なシャペロン活性を試験管内で確認することもできた。特にMKBPについては、その会合活性と同様に、このシャペロン活性にもN末端領域は必須ではなく、基本的な活性がα-srystallinドメインに存在することも確認できた。
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