研究概要 |
1.脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子のカルシウム応答性の解析: ラット大脳皮質初代神経細胞培養系におけるニューロンヘのカルシウム(Ca^<2+>)流入口は、主にNMDAレセプターとL-型カルシウムチャネル(L-VDCC)の二つである。これら流入口の異なるCa^<2+>に対するBDNF遺伝子プロモーターI,IIIの応答性を調べた所、プロモーターIIIはL-VDCC及びNMDAレセプターからのCa^<2+>に応答するが、プロモーターIはL-VDCCからのCa^<2+>流入だけに応答することが明らかとなった。 2.BDNFプロモーターIのカルシウム応答エレメントの同定: 5′-及び部分欠失遺伝子群の解析から、-300〜-200と-120〜-80の領域に強いカルシウム応答性のあることが示された。変異型プロモーターを用いた実験から、少なくともCREやTREが関与していることが示された。現在、その詳細を検討中である。 3.NT-3遺伝子の発現抑制機構の解析: ニューロトロフィン-3(NT-3)遺伝子は、Ca^<2+>流入で発現抑制を受ける。プロモーター解析の結果、Ca^<2+>応答領域は-120以下に存在すること、及び、-14-〜-120に強いサイレンサーエレメントが存在し、それを-1000上流に存在する活性が抑制していることが示された。 4.NRSFスプライスバリアントの効果: 神経細胞で発現されているNRSF(neuron-restrictive Silencer element-binding factor)のスプライスバリアント(NRnV)の、NRSFに対する効果をBDNFプロモーターIを用いて調べた。その結果、NRnVの過剰発現はNRSFの転写抑制活性に拮抗した。BDNFプロモーター活性化にも、クロマチン構造がその制御に関与している可能性が強い。
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