タンパク質生合成の速度と精度はリボソーム上の特定部位におけるGTP水解反応に依存している。この反応に、リボソームRNA中の"GTPaseドメイン"と"毒素ドメイン"と呼ばれる二つの部位とリボソームstalkタンパク質成分の関わることが示されてきたが、リボソーム粒子中におけるこれらの協調性の分子機構は明確にされていない。本年度は、動物細胞から調製されたリボソームStalkタンパク質複合体(Pタンパク質複合体)を使用した生化学的解析により、以下のように、このタンパク質が二つのRNA機能部位と密接な関係にあることを明らかにした。 1)ラットPタンパク質複合体は大腸菌rRNAのGTPaseドメインに結合し、機能を誘発する Footprint法により、ラットPタンパク質複合体が大腸菌リボソーム中のGTPaseドメインに結合する部位を同定し、それに伴いリボソーム機能(GTP水解と、poly(Phe)合成)が動物細胞の翻訳因子依存型に変換することを明確に示した。 2)大腸菌rRNAのGTPaseドメインへのラットリボソームタンパク質の結合は毒素ドメインの構造を変化させる 大腸菌rRNAのGTPaseドメインに結合するラットPタンパク質複合体の結合により、真核生物のリボソームにしか作用しない毒素、ペポシンを受容し、毒素ドメイン(2660部位)のアデニン塩基の遊離を受けること、またその結果、動物型に変化したリボソーム活性も抑制されることを示した。
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