バクテリアは菌体表面に生える、らせん状のべん毛を回転させることにより運動する。バクテリアの細胞膜にはべん毛を回転させる役割をもつモータータンパク質が埋め込まれており、バクテリアはそこから細胞質内に流入するイオンのエネルギーによりモーターの回転力を作っている。べん毛モーターはその共役イオンの違いからH+駆動型とNa+駆動型とに分けられる。Na+駆動型モーターの構成タンパクとしてPomA、PomB、MotX、MotYが同定されている。いずれの4つのタンパク質もモーターの回転に必須であり、すくなくともPomAとPomBが複合体を形成しNa+チャネルとして機能することが証明されている。べん毛モーターの機能を理解する上で、その回転速度を解析することは重要で、モーターの回転速度測定方法の1つとして、テザードセル法がある。これまでテザードセル法を使う場合に、テザードセルをビデオに録画しその再生画面から回転速度を計算してきた。ビデオは秒間30コマであり、この時間分解能を超える速度で回転するテザードセルを解析するのは不可能である。この問題を解決するために、高い時間分解能をもつ高速度CCDカメラを使用しテザードセルの解析を試みた。その結果、低NaCl濃度では、テザードセルの回転数が急激に増加して約20Hzに達し、5mM以上のNaClではほぼ変化がなかった。pomA欠損株中でpomAの発現量を順次増加させ、テザードセルの回転数を測定すると、時間とともに回転数が増加していくようすがみられた。今回は、一匹の菌体を継続して測定できなかったので、ステップについては結果は得られていない。冷後、IPTGを加えてからの経過時間を細かく区切り、サンプル数を増やして解析する必要があると思われる。
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