『生物分子モーターの1方向性の運動はどのようにしておこるのか?』の問題に対して、いろいろな説明がなされている。生物分子モーターのひとつであるアクトミオシン系ではその説明のひとつは、『滑りの力を発生する正のストレインのところでアクチンとミオシンは解離しにくいが、ストレインが小さい、あるいは負のところで解離しやすいことを利用している』という考えである。この説を検証する目的で1997年にウサギ骨格筋速筋の筋原線維のATPターンオーバーを蛍光ATPとケージドATPを用いて、ATPターンオーバーがストレインに依存することを示し、上記の説のようなバイアスの存在を示唆した。その後、この実験測定の確度を調べる目的でウサギ骨格筋遅筋の筋原線維で同様の実験を行った。そして同じ結論に至り、この論文はBiophysical Joural 誌2000年2月号に掲載された。現在はアクトミオシンモーター分子のレベルで検討する目的で、そのアクトミオシンに結合している蛍光ヌクレオチドの寿命がストレインに依存するかどうかの実験を行っている。アクトミオシンに結合している蛍光ヌクレオチドの寿命はPrismless TIRFM で観察するが、その寿命測定はアクトミオシンATPの反応が速いため通常のビデオイメージングでは時間分解能が1/30秒の限界がある。この時間分解能をあげる目的でTIRFMからの蛍光ヌクレオチドのスポット像をミラー(DUAL VIEW装置のヌクレオチドの蛍光像が通る光路にあるミラー)を振動させ、ビデオ画像上にそのスポットの軌跡として記録する装置を製作し、時間分解能を上げるビデオイメージングに成功した。現在、アクトミオシンにストレインがかかった状態での結合ヌクレオチドの寿命の測定を進めている。
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