神経細胞壊死の機構解明を目的として、2つのテーマで研究を進めてきた。第一に、一過性の脳虚血負荷後の遅発性神経細胞壊死に、NMDA受容体チャネルがどのように関与しているかを検討した。一過性の虚血モデルとして、眼圧上昇による虚血と再灌流系を用いた。NMDA受容体チャネルサブユニットε1-4各々を失失したマウスで、眼圧上昇による一過性虚血負荷により神経細胞壊死がどのように起こるかを経時的な組織学的検索により検討した。その結果、ほぼ全ての視神経細胞及びアマクリン細胞が遅発性に壊死する60分の虚血負荷でも、ε1サブユニットノックアウトマウスでは、神経細胞の壊死がほとんど起こらないことが明らかになった。また、ε2サブユニットをヘテロに欠失している個体では、軽度の細胞壊死阻止効果が認められた。以上のことから、これらの神経細胞壊死の過程にNMDA受容体チャネルε1、ε2サブユニットを介する過程が存在することが示唆された。また、脊髄根動脈の胸椎レベルでの一過性虚血を誘発するモデルを開発している。一方、ヒト疾患モデル動物を作成するために、歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症の原因遺伝子であるDRPLA遺伝子のマウスカウンターパートを得てその構造を解析した。現在ヒト変異DRPLAcDNAをノックインしたターゲティングベクターを作製している。
|