これまで中枢神経ニューロンの細胞系譜で、細胞がどのような生存調節を受けているかを詳細に解析した仕事は皆無に等しい。本研究では小脳顆粒細胞の細胞系譜で細胞分化の過程においてどの程度の細胞死が起こるのか、また前駆細胞がどのような生存調節を受けているのかを詳細に解析することを主たる目的とした。 1.小脳顆粒細胞・細胞系譜の発生に伴う細胞死の検討 生後3日目から15日目までのマウス脳の連続凍結切片を作製、小脳顆粒細胞・細胞系譜の細胞の中で細胞死を起こしているものを、核の形態変化(ヨウ化プロピジウムで染色)を指標として検出したところ、内顆粒層において細胞死を起こしている細胞が多数認められたがその割合は大きくなかった。分子層においても細胞死を起こしているものが認められた。外顆粒層の浅層、すなわち顆粒細胞・前駆細胞が盛んに増殖している層でも細胞死を起こしている細胞が多数認められた。神経栄養因子仮説で説明できる細胞死は内顆粒層における細胞死のみであり、外顆粒層浅層及び分子層における細胞死がどうして起きるのは不明である。 2.小脳顆粒細胞・前駆細胞の生存調節のin vitro培養系における検討 これまでの研究で小脳顆粒細胞・前駆細胞は高細胞密度では高い生存率を示しすが細胞密度が低い条件では細胞死が誘導されることを明らかにしているので、本研究では既知の因子を様々に組み合わせて添加することにより低細胞密度培養系の生存率を上昇させることを目指したが、有意に生存率を上昇させることはできなかった。現在前駆細胞の生存シグナルの性質を検討中である。
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