研究概要 |
サポシンA,B,C,Dは、リソゾーム水解酵素を活性化する分子量約1万の糖蛋白質で、プロサポシンはこれら4種のサポシンをドメインとして持つ前駆体蛋白質である。脳神経系では、そのほとんどがプロセスされないプロサポシンの形で存在し、ある種の神経核その神経路の神経細胞に限局して分布している。最近我々は、プロサポシンがin vivoにおいて虚血性神経細胞死を抑制すること、坐骨神経切断後の神経再生を促進すること、培養海馬神経細胞の突起進展を促進し、その細胞死を抑制することを明らかにし、さらにこの神経栄養因子活性がプロサポシンのサポシンCドメインのアミノ末端側に限局することを実証してきた。 今回我々は、神経栄養因子プロサポシンが含有される神経細胞の詳細を明らかにするため、免疫組織化学的手法を用いてラット内側中隔核・対角帯核-海馬系を中心に検討を行った。光顕レベルでは、内側中隔核・対角帯核にはプロサポシン陽性神経細胞体、海馬CA1領域にはプロサポシン陽性の神経終末と思われる像を得た。海馬にフルオロゴールド注入後、内側中隔核・対角帯核を含む切片にプロサポシン免疫組織化学染色を施した結果、二重染色細胞を認めた。これらの結果から、内側中隔核・対角帯核のプロサボシン陽性神経細胞が、海馬に投射していることが考えられた。内側中隔核・対角帯核を含む切片に、抗コリンアセチルトランスフェラーゼ(CAT)で免疫染色を行った後、プロサポシン免疫組織化学染色を施した結果、両染色はほぼ一致したパターンで二重染色細胞を認めた。すなわち、内側中隔核・対角帯核から海馬に投射しているプロサポシン陽性神経細胞はコリン作動性神経細胞であることが考えられた。内側中隔核・対角帯核領域の免疫電顕的観察では、神経細胞体内のリソゾーム様構造物及びそれ以外にゴルジ関連構造物に陽性反応を認めた。
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