研究概要 |
血管内皮細胞を含む多くの細胞では,カベオリン-1,2がヘテロオリゴマーを作り,カベオラを形成すると考えられている.カベオリン-1はシグナル伝達制御やコレステロール輸送に直接関わることが知られているが,カベオリン-2の役割は明らかでない.我々はカベオリン-2の生理的意義を解明する目的で以下の実験を行った.内在性カベオリンを持たない細胞にカベオリン-2を強制発現させたところ,脂肪滴の輪郭に一致した局在を示した.免疫電顕の金コロイド標識は脂肪滴内部に認められた.同じ細胞に発現させたカベオリン-1は形質膜に局在した.一方,内在性にカベオリン-1,2をもつ細胞に導入したEGFP標識カベオリン-2は,形質膜および核近傍のゴルジ装置と思われる構造に局在したが,脂肪滴形成を誘導すると脂肪滴周囲に移行した.N末を欠如する変異カベオリン-2分子を作製して細胞に導入した実験により,脂肪滴への局在にはN末から67-86番目の20アミノ酸が必要であることが明らかになった.脂肪滴へのターゲッティングに必要な20アミノ酸は,カベオリンー1と親和性を持つと報告された2つの部分のうちの一つである.我々は,カベオリン-2のmRNAにはCDSの3′端を欠如したバリアントがあることも見出した.これらの結果は,カベオリン-2がカベオリン-1と異なるターゲッティングシグナルを持ち,脂肪滴に輸送され得ることを示す。カベオリン-2は従来知られていなかった未知の機能を持つのではないかと考えられる.
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