研究概要 |
マウスでは胎生6.5日目の側板中胚葉領域で血液血管共通祖先細胞(ヘマンジオブラスト)が発生し、胎仔内においてはpara-aortic splanchnopleural mesodem(以下P-Spと略す)領域に移動し、造血幹細胞、血管内皮細胞に分化する。胎生9.5日の臍腸間膜動脈内にTIE2,c-Kit陽性の造血細胞がTIE2,Flk-1陽性の血管内皮細胞に接着,蓄積している組織所見が得られ、cell sorterによって本領域のTIE2,c-Kit陽性細胞を分画・回収し解析したところ,TIE2,c-Kit陽性細胞は1.2個に1個の頻度で多分化能を有する造血幹細胞であることが判明した。さらにP-Sp/AGM領域ではTIE2を発現する細胞からのみ造血細胞が発現し、低頻度ではあるものの1個のTIE2陽性細胞が造血細胞、血管内皮細胞の両者に分化するという結果も得られた。つまりヘマンジオブラストから造血幹細胞への分化過程にTIE2は発現するものと考えられる。さらにヘマンジオブラストを多く含むと考えられるマウス胎生8.5-9.5日のP-Sp領域を外植体としてOP9ストロマ細胞上で培養することにより、血管内皮細胞においては脈管形成と血管新生を、造血に関しては2次造血(成体型)を同時に観察できる培養系を開発した(P-Sp培養)。本培養法を用い造血幹細胞の発生を欠損するAML1遺伝子の破壊マウスのP-Sp培養を施行したところ、血管網の発生が完全に抑制されており、これらの血管形成の異常は造血幹細胞を外来性に本培養に添加することで改善した。詳細な検討の結果、造血幹細胞から分泌されるTIE2のリガンドであるアンジオポエチンー1が血管新生に必須の役割を果たすことを見い出した。
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