造血幹細胞の増殖・分化や造血器腫瘍の増殖・臓器特異性において骨髄微小環境のもとでの糖鎖、特にアスパラギン結合糖鎖の意義については不明である。 本研究ではアスパラギン結合糖鎖の造血幹細胞の増殖・分化における生物学的意義を明らかにするため、β1-4N-acetyglucosaminyltransferase III(GnT III)遺伝子のトランスジェニックマウスに認められる汎血球減少の分子機構を解明し、造血幹細胞とストローマ細胞との相互作用における細胞膜糖鎖の意義を明らかにし、さらに詳細な分子機構を解明し、造血器腫瘍の治療としての造血幹細胞移植への応用や遺伝子治療への応用を目的とするものである。 結果 1.GnT IIIトランスジェニックマウスの造血障害の分子機構の解析 アスパラギン結合糖鎖のprocessingに重要である糖転移酵素GnT IIIのトランスジェニックマウスで認められる汎血球減少の解析から、骨髄ストローマ細胞の細胞膜は造血幹細胞の増殖、分化に需要であることを明らかにした。 2.GnT IIIトランスジェニックマウスのストローマ細胞の障害分子の同定。 GnT IIIトランスジェニックマウスの骨髄ストローマ細胞上の障害分子としてVCAM-1のVLA4との結合障害を明らかにした。GnT IIIによる糖鎖はインテグリンVLA4/VCAM-1の相互作用に影響することをはじめて明らかにした。 本研究により新たな造血制御機構として、糖鎖を介する造血制御の存在を明らかにした。
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