1.安定同位体でラベルしたペプチドを大腸菌で発現させる系を改良した。ペプチドはユビキチン(酵母よりクローニングしたもの)との融合蛋白質として発現していたが、ユビキチン遺伝子のcodon usageを大腸菌のものに合わせ、またコピー数を増やすことによって、約2倍の発現が得られるようになった。安定同位体化合物は高価なので、発現量が上がることによってラベルペプチドを用いた研究が推進されると期待される。 2.レセブターがG蛋白質を活性化する機構について、「レセプターがG蛋白質αサブユニットのα5へリックスを解き、その構造変化がα5へリックスとβ2/β3ループの間のイオンペアによってグアニンヌクレオチド結合部位へと伝えられる」という仮説を我々は立てている。そのイオンペアを破壊した新たなmutantを作り、ムスカリン性レセプターとのカップリングを解析したところ、上記の仮説を更に支持する結果が得られた。また、αサブユニットの立体構造変化を解析する時に、今までスマトパランやcompound48/80で活性化していたが、より生理的であるm4ムスカリンレセプターの部分ペプチドでも同じ結果が得られた。このペプチドは大腸菌で良く発現されるので、活性化機構をNMRで解析するのに大変有用であると期待される。 3.最近の細胞膜に穴をあけることによって殺菌作用を示すマガイニン2の脂質二重膜中の立体構造をNMRで決定した。TRNOEによる解析の結果、主鎖について0.43Åという精度の高い構造を決定することができた(PDB ID code:1DUM)。脂質二重膜に結合した時、マガイニン2は2本のαへリックスが逆平行になったダイマーを形成することが明らかとなった。個の構造を基にすれば殺菌活性のより高いペプチドがデザインでき、新たな構成物質の開発にも結びつくと期待される。
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