研究概要 |
目的:本研究では、種々の正常人末梢血由来のリンパ球およびマクロファージを感染標的細胞として用いてHIV-1インテグレース変異株を解析し、インテグレースの新たな機能(核移行機能等)の有無を検討することを目的とした。 方法:HIV-1インテグレース内の燐酸化酵素のターゲットとなりうるモチーフあるいはその他の保存アミノ酸に点変異を導入した変異HIVを作製し、各変異の影響を種々のヒト末梢血由来のリンパ球あるいはマクロファージを感染標的細胞としてもちいてウイルス学的に解析した。核移行機能の検討は、その機能が知られているVpr欠損HIV-1を核移行欠損コントロールウイルスとして用い、HlV-1感染成立において核移行機能を強く要求されると考えられる非分裂細胞としてヒト末梢血単核球由来のマクロファージを感染標的細胞として用いた。 結果:1.PKCあるいはCKIIによるインテグレースのリン酸化の関与に関しては、若干の組み込み反応の低下が認められる(T66,T93)ものも得られたが、criticalではないと思われた。 2.HIV-1インテグラーゼのNLSと考えられていたKRKモチーフ(K186-188)は、機能的には核移行ではなく逆転写反応に関与しているものと考えられた。 3.Y143G変異体は、MDMにおいて感染効率が顕著に低下するという、vpr欠損変異体に酷似した表現系を示し、非分裂細胞における感染効率維持に重要なアミノ酸であることが示された。また、GFP-融合インテグレースはHeLa細胞内において強い核極在性を確認した。 考察:HIV-1の感染初期過程におけるインテグレースの新たな機能として、プレインテグレーション複合体の核内移行と逆転反応の完結に関与している可能性が示唆され、両反応は互いに相関しておこるように思われた。またNLSドメインに関しては、再検討の必要性が示された。
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