H10年度の本研究によりヒトLD78/MIP-1α遺伝子群は、極めて大きな多様性がある。N-末端のアミノ酸配列を基にLD78A群とLD78B群に分類した場合、RFLP解析によりHIV-1感染・長期非進行者ではLD78B群が多く、進行者でLD78A群が多いことが明らかになった。そこでH11年度では、LD78A群とLD78B群の生物学的解析を行ったところ、LD78A群とLD78B群では、ウイルスへの影響およびCCR5のdown-regulationにおいて大きな差が見い出された。この原因は、N-末端の第二アミノ酸残基の差による事が明らかになった。また、他のケモカインにおいてCD26(リンパ球、マクロファージの細胞表面に発現され、N末端から二番目のアミノ酸残基がプロリンまたはアラニンである場合、N末端の二個のペプチドを切断する活性をを持っている。Dipeptidyl Peptidase IVとも呼ばれる。)による切断により活性の差が見い出されている。LD78Bでは、このCD26により二回切断される構造をもっている。N-末端が切断された構造をもつLD78B蛋白を大腸菌で発現させ解析した。一回切断では、活性の大きな低下は認められなかったが、二回切断により活性が大きく低下した。このことは、LD78B蛋白もCD26による調節を受けている可能性を示唆した。更に、LD78BのN末端の生物学的活性を解析するためにCCモチーフまで2アミノ酸残基ずつalanine(A)残基に置換した変異体を6個作成しその生物学的活性を調べた。2番目のプロリン残基及び7番目のThr残基から9番目の残基までがCCR5 down-regulationおよび抗ウイルス活性の低下が認められこの部分が重要である事が示唆された。
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