研究概要 |
本計画では1)我々の作製した「スーパー抗体酵素」がターゲット分子を破壊する能力を獲得するメカニズムを解明する事、2)抗原を分解する反応機構を解析する事、3)「スーパー抗体酵素」のHIVに対する増殖抑制効果を検討する事、さらには4)航抗HIV薬として可能性のある別なタンパク質を攻撃する新しい抗体酵素の作製する事、等を目的に研究を行っている。 これまでの研究成果と新たに判明した事実として(1)「スーパー抗体酵素」はHIV-1外膜タンパクgp41の保存領域ペプチドを酵素的に分解するだけでなく、gp41分子をも特異的に破壊する。抗原分解活性はkcat/km=2.3x10^5M^<-1>min^<-1>と非常に高い。この活性はトリプシンと比べたところほとんど同程度であった。また、相当な低濃度(nM)でも高い抗原分解活性を有していた。(2)「スーパー抗体酵素」にはCDR-2の近傍に触媒三ツ組残基が存在し、それらの距離間はキモトリプシンより若干大きい。また、抗原認識あるいは取り込み関与している主な領域は超可変領域(CDR)-1であると推定され、その抗原結合能はCDR-1単独で10^7/Mという大きな値を示す。(3)「スーパー抗体酵素」は金属イオン(Fe,Zn,Ca)の影響を強く受け、EDTAを反応初期に添加すると酵素活性は完全に阻害される。適切なrefoldingを始め、酵素活性を発揮するまでにいくつかの重要なステップがある。(4)「スーパー抗体酵素」はE. coliでは、インクルージョンボディーとして発現され、可溶化が非常に難しい。(5)「スーパー抗体酵素」はin vitroでHIV-1に対する増殖抑制活性を示した。(6)HIV-1の逆転写酵素を分解する新しい抗体酵素を見出した。この抗体酵素はRTペプチドをR-G,T-Kで切断する。等が明らかとなり、今後の展開が大いに期待される。
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