本年度研究において、我々が単離したSPA-1分子およびRap1について以下の点を明らかにした。 1.昨年明らかにしたRap1による接着亢進は、integrin分子の直接的活性化によるものあること、またこの活性化機構はH-RasやRacによる活性化とは異なり、Pl3キナーゼを介さない経路によるものであることが明らかとなった。 2.SPA-1/Rap1系の生体内での役割を明らかにする目的でSPA-1遺伝子破壊マウスの作成を行った。 SPA-1(-/-)マウスは正常に生まれ、外見上全く健康であった。このマウスの免疫系について解析を行ったところ、T細胞、B細胞の分化は全く正常であり、生後2ヶ月までその機能も何ら異常が認められなかった。しかし、生後7〜8ヶ月令のマウスでは、T細胞は正常に存在しているにも関わらず、ConAに対する反応は消失していた。一方、LPS反応性は正常であった。この時点におけるノックアウトマウスの脾細胞における活性化型Rapl(GTP結合型Papl)の量を調べたところ、正常マウスの比べはるかに多い量の活性化型Raplの蓄積が認められた。以上の結果から、活性化型Raplは免疫系、特にT細胞の機能に対し負に働くことが示唆された。 今後、同マウスの他の造血系細胞の解析ならびに免疫系についても2次応答の有無を中心にさらに解析を進めていく予定である。
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