研究概要 |
われわれはこれまで、Etsファミリー転写因子PU.1をマウス赤白血病(MEL)細胞に強制発現させると、DMSO添加による赤血球様細胞への分化が抑制され、加えて増殖抑制とアポトーシスが誘導されることを見い出し、その分子機構を解析してきた。今回の研究において、さらにPU.1の機能につき検討を加え、以下の点を新たに明らかにした。 1)PU.1およびそれと相同性が高いSpi.BのN末には転写補助因子CBP(CREB binding protein)が結合し、Etsファミリ転写因子とその他の転写因子(c-Myb)間でCBPを介した「正」および「負」のクロストークが生じる。2)PU.1過剰発現で誘導されたMEL細胞の増殖抑制とアポトーシスは、CBPを過剰発現することにより解除されるのに対し、細胞分化の抑制は解除されない。3)PU.1はEts結合配列をタンデムに繋いだプロモーターに対してはCBPと強調して転写促進に働く一方で、Ets結合配列をもたないc-myc,c-fosなど多くの遺伝子のプロモーターに対しては逆にその転写活性を抑制する。4)PU.1には転写補助因子であるCBPのみならず、転写抑制補助因子であるHDAC(histone descethylase)や基本転写因子であるTBPとも結合する。5)PU.1の過剰発現により、survival mother neuron(SMN)遺伝子、転写因子MEF2遺伝子と相同性を示す遺伝子などいくつかの興味ある既知および未知遺伝子発現が変動するとともに、マクロファージ特異的細胞マーカーが出現する。 今後は、5)の既知および未知遺伝子発現と赤血球分化との関連について検索していきたい。
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