シロイヌナズナ杯軸偏差成長欠損で優性の突然変異msg2の原因遺伝子のクローニングを試みた。染色体上のマッピングの結果、MSG2は第3染色体の中ほどにあることがわかった。該当領域付近の全塩基配列は既に発表されているので、それを利用して精密なマッピングをおこなったところ、MSG2はP1クローンMJK13上にあった。同クローン上にはオーキシン誘導性Aux/IAA遺伝子族遺伝子IAA19があるので、msg2の4個のアレルのIAA19の塩基配列を決定したところ、どの変異もAux/IAA遺伝氏族に保存されている第2ドメイン内の特定の3個のアミノ酸残基でおこっており、その内の一つは既報の優性突然変異axr3と同一であることがわかった。この結果は、IAA19がMSG2であることを示している。一方、もう一つの胚軸偏差成長欠損突然変異遺伝子座NPH4/MSG1のクローニングもおこなった。同変異は劣性で、同遺伝子座はオーキシン応答性転写因子遺伝子ARF7であることがわかった。ARF7も広義のAux/IAA遺伝子族遺伝子であり、MSG2/IAA19とドメイン3/4を介して相互作用することができる可能性があることが報告されていることを考えると、胚軸偏差成長の分子機構の中心はARF7であり、msg2はARF7と相互作用することで偏差成長異常をひきおこしていることが示唆された。msg2とnph4の2重突然変異体を作成してその表現型を調べたが、その結果はこの仮説と矛盾しないこともわかった。
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