本研究では、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)の活性化に働くCDK活性化キナーゼ(CAK)に関して、その分子機能とin vivoにおける生理的役割を解析した。まず酵母を用いたtwo-hybrid法により、アラビドプシスのCak1Atと相互作用する因子を検索した。その結果、イネのCAKであるR2と高い相同性をもつクローン(cak2At)が同定された。そこで、CaklAtがCak2Atを上流で制御するキナーゼである可能性を調べるため、分裂酵母のcsk1変異株を用いて遺伝学的解析を行なったところ、CaklAtがCAK活性化キナ-ゼとして機能することが強く示唆された。一方、cak1Atをアラビドプシスで過剰発現させると、根端分裂組織における細胞分裂が停止し、細胞が分化の方向に進行することが明らかになった。その表現型を時間軸に沿って詳細に解析したところ、cak1Atの発現によってcolumella及びcortexの始原細胞が18時間以内に分化することが明らかになった。また、cak1Atの発現により2時問以内にCDK活性が低下するものの、cyclin-GUSマーカー遺伝子は24時間経過しても発現していた。したがって、形質転換植物では「CDK活性の低下」→「始原細胞の分化」→「細胞分裂の停止」という順序で表現型が現れることが示された。以上の結果から、始原細胞においてCDK活性が維持されることがその機能に必須であると考えられる。
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