研究概要 |
三つの説話群(1.シュナハシェーパの物語,2.プルーラヴァスとウルヴァシー,3.マールターンダ)について,原典テキスト,翻訳,註解を入力し,原稿として完成させた。2.と3.とについて時代と学派を異とする複数の伝承が伝えられているが,代表的なものを紹介するのではなく,それらすべてを対照の上検討・呈示する方法を採り有意義な成果が得られた。また,この両物語の古く重要な伝承を含む一学派の写本が京大人文研の井狩教授によって発見され出版の準備がなされているが,同氏の好意によりその原稿の提供を受け,他に先駆けて検討を加え翻訳を準備することができた。この部分についてはその重要性と緊急性とからドイツの雑誌に論文を寄稿し,目下印刷中である。 本年度中に完了した部分の翻訳と注釈とは印刷した場合に換算して約55頁分に当たり,原典の校訂版その他を合わせて,計80頁程に相当する。 上記の作業の為に,コンピューター二組を購入し,学生諸氏(主たる作業には2名)の協力を得た(→謝礼)。これらの成果を基に,全体の計画の細部について検討を加え,次年度の作業の見通しを立てることができた。結果として,予想以上に詳細な注記や,文法・語彙・内容に亙る個別の研究成果の呈示が必要であることが解ったが,個々に発表する余裕はないので全てをこの研究計画が完成した際の出版の中で発表することとしたい。取り上げる対象数は当初の予定より絞り込み,より深い知見の呈示を目指すこととする。物語的な素材を中心としつつも,祭式,生活,文化,思想哲学などの諸点に亙って重要と思われる原典箇所を選び,計20程度の題材の収録を目指したい。特殊記号の処理方法は未だ十分に解決できていないが,できるだけ理想に近づけたい。
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