研究概要 |
インド哲学における聖典観の展開を、特に9-10世紀の二人の思想家ジャヤンタ・バッタとヴァーチャス パティミシュラに焦点をあて,本文批評の方法論に対する自覚を深めつつ解明するという本研究の目的を達成するために,今年度は資料収集・情報交換,関連資料のテキスト・データベース構築ならびに関係資料の解読作業を行った。すなわち研究代表者・丸井はヨーロッパ出張により当地のインド哲学関係者との貴重な意見交換をなしたほか,ニヤーヤ・ヴァイシェ-シカ関係の重要なテキストの写本複写や多数の論文コピーを入手した。またジャヤンタの聖典観分析のため『ニヤーヤ・マンジャリ-』第4章の部分的解読に努めた。そのほかジャヤンタとヴァーチャスパティの年代の先後関係について先行研究を精査し,かつ幾つかの新知見を加えて日本印度学仏教学会第50回学術大会(9月龍谷大)で口頭発表した。またジャヤンタの著作に関する諸問題の考察を英語論文としてまとめた(今秋に刊行予定の論文集に掲載)。一方,分担者・金沢は『ヴィディヴィヴェーカ』『タットヴァビンドゥ』など関連重要文献のテキスト・データベースを完成したほか,ヨーロッパ主張により写本を含むインド哲学関連の文献調査を行った。またヴァーチャスパティ作『ニヤーヤヴァールッティカ・タートパリヤティーカー』の該当箇所解読を行い,近くその成果を発表する予定である。そのほか本研究に関連する研究成果として,「タントラ学事始一インド学の曙(1)」が『駒沢大学仏教学部研究紀要』58号(平成12年3月予定)において発表される。なお,本文批評の方法論上の問題については,本研究が所属するA02班の調整班会議において,インド哲学および旧約聖書学における当該の問題についての研究発表と討議に,丸井・金沢が参加したことを付記しておく。
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