研究概要 |
(1)本研究は10世紀前後のインド哲学文献の厳密な解読を軸として聖典観の展開をたどり、インド思想における哲学(論理)と宗教との相補関係の文献実証的な解明を目指しているが、今年度は特にインド論理学の体系と宗教伝統・教義の問題との関係に注目した。その問題を考察する中心資料として『ニヤーヤ・マンジャリー』(9世紀末)の推理説の部分をとりあげ、ほぼ3分の2の解読がおわった。その作業と関連する研究代表者の成果として、一般読者をも対象にしたエッセイ『理屈と理屈をこえたもの-インド哲学の意味を求めて-』(印刷中)がある。またポーランドで開催されたインド論理学関係の国際セミナーに参加し、ニヤーヤの推理説について口頭発表(論文原稿準備中)すると同時に、欧米インドの諸学者ときわめて有益な意見交換を行った(2001.6.20-25)。 (2)研究分担者は、文献解読の精度を高めるため関連文献の電子テキスト化を推進し、ヴァーチャスパティ作『タットヴァ・ビンドゥ』とマンダナ.・ミシュラ作『スポータ・シッディ』の電子テキストを完成し、目下両書の完全用語索引を作成中である。また研究代表者はソウルに出張し、韓国での電子テキスト作成に従事する研究者と意見交換を行った。 (3)このほかインド・プーナ大学教授V.N.Jha氏および同講師Ujjwala Jha氏を招き、それぞれ本研究テーマに密接に関わるニヤーヤ学派とミーマーンサー学派の諸問題について討議し、かつそれぞれ講演会を開催した。またウィーンからはE.Prets博士を招聘して、インド論証学の現存最古の資料である医学書『チャラカ・サンヒター』の該当箇所について専門的知識の供与をうけ、とりわけテキスト校訂上の問題点の教示を受けた。 (4)さらに、古典学の諸領域と分野横断的なシンポジウム(2001.9.6-8),研究会(2001.12.15-6;2002.,3.9-11)に積極的に参加し、とりわけユダヤ学との親近性を認識することができた。
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