本研究の目的は、18から19世紀の東アジアの前近代の科学関連資料・科学古典を収集整理し、それを通して当時の科学と科学思想を、東アジア文明総体の中に位置付けるところにあるが、今年度の主要な成果は大きく2つある。 1つは研究基本資料の収集である。朝鮮本の科学関連資料・科学古典を入手しただけでなく、『文淵閣四庫全書電子版』(CD-ROM)をも購入した。後者は四庫全書の漢字データベースであるが、八万巻の古典書を一挙に文字検索可能であり、中国学の文献考証の方法を一変させる契機をもっている。 他の1つは朝鮮王朝後期の実学派の1つ、北学派の科学思想の研究である。現在、研究代表者は初期の洪大容(1731〜1783)、研究分担者は後期の金正喜(1786〜1856)に照準をあわせて分析中であり、北学派学者の中国学の内容に注目しつつその性格について考察している。 また三月、平成11.12年度にできなかった訪中を実施し、中国科学院自然科学史研究所の研究員と学術交流を果たす予定である(3.11〜3.22)。
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