本研究の目的は、17〜19世紀東アジアの科学関連資料・科学古典を収集整理し、それを通して当時の科学と科学思想を、東アジア文明総体の中に位置付けるところにある。主要な研究成果をあげれば次のとおりである。 第一の成果は基本資料の収集である。 1.北京大学図書館蔵『黙思集算法』、『韓国文集叢刊』『朝鮮王朝実録』『国訳叢書』『與猶堂全書』『燕行録選集』『続修四庫全書』(経部)など 2.漢字データベース『三国史記』『司馬榜目』『高麗史』『文淵閣四庫全書電子版』など 第二の成果は新たな知見をえたことである。 1.和算が豊臣秀吉の朝鮮侵略時の略奪本を基礎として成立したことを明らかにした。 2.朝鮮王朝後期の実学者、洪大容の学問形成において、中国清代の西学系の科学書の影響が大きいことを発見した。 また2001年11月には、中国科学院自然科学史研究所の所長と副所長、中国科学技術館の館長を招聘して、小規模の国際科学史会議(東亜科学与思想国際学術討論会)を開催した。小規模の専門家会議に固執したのは、多人数では十分な討論を行うことはできないとの研究代表者の信念にもとづいている。また2003年2月には、先の研究分担者、現韓国翰林大学校助教授の梁一模氏(2001年帰国)を招聰して、第2回東亜科学与思想国際学術討論会を開催した。
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